薄暗い海底を尾びれをなびかせて泳ぐケムシカジカ(写真・記事 寺沢孝毅)
ケムシカジカ(別名 カワムキカジカ、トウベツカジカ、ナベコワシ)
カサゴ目ケムシカジカ科
異様な容姿 海底で存在感
もう初冬ともいえる海中にいた。海底は黒っぽい岩場で、曇り空ということもあり、深さ数メートルでも薄暗い。シケの多いこの時期、道北の海は透明度が下がり、このときは7、8メートル。どんな生き物がいるのか興味はあるが、気持ちのいい海とはいえない。
そこへ不意に現れた魚がいた。その存在感ある容姿に、一歩引きたくなる気分だった。異様に大きな頭、突起した目、大きな口。顔のあちこちにひだ状の飾りがある。カジカの仲間に違いない。
そのカジカは尾びれをなびかせ、数メートル移動しては海底にたたずんだ。岩肌や海藻などの色彩になじみ、目を離せばその存在を見失うほど。
そのとき、この魚があの美味を誇る魚とは知る由もなかった。海の幸は、その味と容姿がこのような関係であることが多い。このケムシカジカ、初冬が旬である。
カワムキカジカ、トウベツカジカ、ナベコワシなどの地方名がある。冬の産卵時期だけ浅場に上がってくる。主に東北地方からベーリング海まで分布。味噌汁、鍋物、唐揚げ、肝臓と身を和えた「ともあえ」、刺身、卵の醤油漬けと食べ方は多彩。カジカのなかで味が一番との評価もある。ナベコワシとの異名は、美味しくて鍋を壊すほどつつくことから付いたとか。

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